作品名:エンジェル・ハウリング



作品概要  物語の主人公は奇数巻と偶数巻で異なり、奇数巻の主人公はミズー・ビアンカ。偶数巻の主人公はフリウ・ハリスコーとなっている。
 二人の主人公は時折話の中で絡みながら、ミズーは自分の過去に向き合い、フリウは謎の精霊『アマワ』に向かい合うことになる。

 非常に哲学的な作品で、ライトノベルと呼ぶのは難しいかもしれない。
 特にミズーの出てくる奇数巻のほうでは秋田禎信の作品とは思えないほどシリアスな展開で、笑うような場面が殆ど見当たらない。その部分をおそらく偶数巻でのフリウ編に当てているのだと思われる。

 世界観は、荒廃した大地に帝国と呼ばれる都市があり、そこが全てを統一しているといった感じ。
 この世界に存在する『精霊』には『無形精霊』と『有形精霊』が存在し、全社は捕獲され、エネルギー源として利用される。後者は『水晶檻』とよばれるものに閉じ込められ軍用などに使役される。
 作中ではフリウは左目に眼帯をしており、その眼帯を取ると左目には『水晶眼』と呼ばれる強力な『水晶檻』が存在し、その眼には最強の精霊のひとつである破壊精霊が宿されている。
 精霊を操るには『念糸』というものを使いこなす必要があり、そのため多くの『精霊使い』たちは『念糸』を操ることが出来る(一部の例外である水晶眼保持者を除く)。

 作品のジャンルとしては区分するのが難しいが、奇数巻を重厚なファンタジーとすると、偶数巻はややライトなノリのファンタジーといえる。



感想・批評  知名度では魔術士オーフェンに及ばないが、それでも作品としては他の作品を大きく逸脱する良さを持っている作品。
 ただ重厚な作りなので、ライトノベル、として読むのは辛いかもしれない。
 感じとしては、ミヒャエル=エンデの『はてしない物語』のようにファンタジーでありながら哲学的な要素を入れている。
 作品のギミック、登場人物の設定などが実に緻密で、仕掛けた複線を全て最終的に明かしているので文学作品としても評価できるものだと思われる(ただし、偶数巻は多少ノリが軽いため文学作品としては難しいかもしれない)。
 世界観の設定もすばらしく、精霊などの必要最小限の説明にとどめ、その他の世界はわざと読者の想像にゆだねるように作られている。
 『絶対殺人武器』といった作者の造語も興味を引くものがあり、人を武器にする、という発想は面白いかもしれない(ザンボット3の人間爆弾のような意味ではなく、人を剣に見立てて鍛える、というもの)。
 殺陣も上手く描かれており、特に精霊同士の戦いはすばらしいです。

 ファンタジー好きならば一回は読んでみて欲しい作品。
 因みに私はこの作品が好きで全部買ってしまいました。